プーシキン美術館所蔵浮世絵コレクション(18-19世紀)

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風景画

浮世絵とは、江戸時代の町人の日常生活を描いた絵のことです。「浮世」という語は、昔の仏教用語の一つで、「はかない世」、「苦界」、「無常の世」という意味でした。十七世紀末、「浮世」という語は、喜びと楽しみに満ちたこの世、現世のことを意味するようになりました。日本の版画、浮世絵は、十八世紀末に開花しました。浮世絵の主人公は、遊女、役者、相撲取り、戯曲の登場人物、歴史上の英雄、つまり第三身分の代表者たちでした。そして各々に、次のようなそれぞれのジャンルが生まれました。すなわち、「遊郭」の美女の像、役者の肖像や歌舞伎の舞台の場面、神話や文学が主題の絵、歴史上の英雄の絵、有名な侍たちが戦う合戦の場面、風景画、そして花鳥画などです。

日本の造形美術における風景画のジャンルは、中国美術の影響のもとに生まれました。「山と水の絵」という意味の「山水画」という語も、同じく中国から借用したものでした。というのも「山」と「水」は、二元論的世界図の象徴として、極東の風景画の基本を成す要素だったからです。浮世絵において、風景画は、ようやく十八世紀末になって独立したジャンルになりました。それまでは、風景のモチーフを、絵本の挿絵や一枚絵の背景にようやく見ることができるだけでした。十九世紀初頭、芸者や役者の絵が検閲により制限されるようになると、風景画は浮世絵の主導的ジャンルの一つになります。

日本の版画、浮世絵の風景は、「風景画」という用語、または「景観を描いた絵」と規定されます。崇高な峰々、川や海などから成る理想化された風景とは違い、浮世絵に描かれたのは、日本人みんなが親しみや懐かしさを感じる名高い富士山の眺め、急速に発展する首都、大都市江戸の景観、あるいは古都、京都と新都、東京を結ぶ東海道の風景でした。

日本の古典的木版画における風景画のジャンルの開花と、《冨嶽三十六景》、《東海道五十三次》、そして《名所江戸百景》などの風景版画の連作を描いた二人の偉大な絵師、葛飾北斎と歌川広重の名前とは、切っても切り離すことができません。風景画のジャンルで活躍した多くの絵師たちは、当時、遠近法や明暗法などヨーロッパ美術の技法を積極的に取り入れました。